高脂血症(脂質異常症)について

高脂血症のイメージ写真

血液中に含まれる脂肪分の濃度が異常値を示す疾患です。
健康な人の場合、LDLコレステロール値(いわゆる悪玉コレステロール)が140㎎/dl未満、HDLコレステロール値(善玉コレステロール)が40㎎/dl以上、トリグリセリド(中性脂肪)が150㎎/dl未満です。

この値のうち、1つでも適正値から逸脱してしまうと、脂質異常症と診断されます。
また、LDLコレステロール値が120~139㎎/dlの場合を「境界域高コレステロール血症」と呼び、高血圧や糖尿病などの罹患状況を踏まえて治療の必要性が判断されます。

放置すると動脈硬化を誘発

高血圧などと同じように、初期段階では自覚症状はほとんどありません。
そのため、自ら体調不良を訴えて医療機関を受診するというよりは、健康診断(血液検査)で指摘されるケースがほとんどです。

しかし、放置していると、中性脂肪やLDLコレステロールが血管の内側に張り付き、硬くなっていきます。
これにより動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まっていくのです。

患者数は200万人以上

脂質異常症に罹患している方は非常に多く、厚労省の平成26年調査によると日本国内で206万2千人にも達しています。
このうち男性が59万6千人、女性は146万5千人。
男女ともに多いのですが、特に女性の方に注意が必要です。
40歳を過ぎたあたりから徐々に増加していき、70歳代で最も多くなります。

もっとも、脂質異常症のみに罹患している場合は、外来で治療できるケースが大半です。
入院に至るケースは年間300人程度で、非常に少ないです。
言い換えると、血液中の脂肪が多いけれど、その他の生活習慣病には罹患していない段階で治療を開始したならば、重症化せずに日常生活を送れる可能性が高くなります。

健康診断などで脂質異常を指摘された場合は、お早めに医療機関を受診し、重症化を食い止めることが大切なのです。

脂質異常症の予防法

  • 栄養バランスのとれた食事
  • コレステロールを多く含む食品、脂っこい料理を控える
  • 糖質(炭水化物)を摂りすぎない
  • お酒はほどほどに(ビールならば1日1本程度)
  • 1日30分以上の有酸素運動を週3回以上行う
  • 適正体重に近づける
  • 十分な睡眠
  • ストレスを溜めず、リラックスする
  • タバコは止める

など

脂質異常症の治療

食事療法、運動療法、薬物療法が三本柱ですが、特に重要なのは食生活の改善です。
肥満傾向の方は、標準体重に近づけるよう減量します。
但し、いきなり体重を減らすことは危険です。
まずは一か月で体重の5%(80㎏の方ならば4㎏)を目標として減量します。

食事療法に関しては、血中の脂質が多くならないような食事メニューを基本とします。
動物性の脂肪を減らして魚や植物性の油を摂取する、3食きちんと摂る、腹八分目にする、就寝前2時間は食べない、よく噛んで食べる、早食いは控える、塩分を減らす、お酒はほどほどに、清涼飲料水や菓子類は過剰摂取しない、などが効果的です。

これと並行し、適度な運動も継続して行います。
定期的に有酸素運動を行うと、中性脂肪が低下し、善玉コレステロール値は上昇します。
散歩やウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳などを1日に30分。これを毎日行うことが理想ですが、仕事などで難しい方も多いでしょう。
まずはできる範囲で始めてみてください。

これらによっても改善しないときは、薬物療法を行います。
コレステロール値が極めて高く、動脈硬化のリスクが高い患者さまの場合、症状が悪化しないよう診断時から薬物療法を行うこともあります。